「売上が年々減少しているんです」

「利益が出ない決算となりました」

「銀行への借入返済が、厳しいです」

こんなご相談を受けました。

弊ブログ

【2代目社長と歩んだ事業回復のストーリー「早期経営改善計画」】

を読まれた製造業の2代目社長から

「まるで自分事のようだ」とご連絡を頂きました。

これは、樹脂成型業を経営する2代目社長の

事業の視える化のストーリーです。

企業名と個人を特定しない条件で、公開の許可を

頂きました。

赤字ではありませんが、収支トントンです

従業員2名と共に社長の中野さんは小さな樹脂成型工場

有限会社 武蔵野プラスチック(個人・会社共仮名)を経営しています。

先代の社長が2年前に急逝され、会社員だった中野さんは、

子供の頃からよく遊んでいた工場が無くなるのは忍びなく、

経営の経験がないままに社長を引き継ぐ事を決断しました。

比較的大きな成型機を2台、小型を3台所有しています。

仕事は先代が、懇意にしていた大手家電向け2次部品メーカーから

金型を支給され、仕様に従い納期に間に合うように常に生産に

終われる毎日だったそうです。

経営はなんとか利益が出る状態で、もっと良くしたいと思っていた矢先の

昨年(平成29年)9月期の決算が赤字見通しの連絡を顧問税理士から受け、

苦肉の策で自分の役員賞与をゼロにするなどで、収支トントンにされたようです。

また、利益が出ている時から感じていたそうですが、

「利益が出ているはずなのに、手元にお金がなく、常に金策に追われる」

状態だったそうです。

そもそも決算書を読み解くのが苦手で、資金繰り表も付けていなかったので

そうなる事は当然の事です。

「このモヤモヤしたお金の流れの視える化と、

黒字化改善計画を策定・実行しないと従業員や支払先に立つ瀬が立たない」

と、キャッシュフローコーチⓇの私に相談がありました。

社長このまま放置しておくと資金ショートして倒産しますよ

典型的なドンブリ経営の社長の中野さんには、決算書で説明してもピンと

来ないのは分かっているので、「お金のブロックパズル」使って、

経営の意思決定に必要な数字のみ抜き出し、図にして3期分を並べて見ました。

すると、

税引き後利益+減価償却費=本業で稼いだキャッシュフロー < 借入返済額

となっていました。

しかも3年連続です。 

これは何を意味するかと言うといずれ銀行に返済が出来なくなるという事です。

今は預貯金から減っていくのみで、その構造がまるで理解できていませんでした。

しかし、お金のブロックパズルで説明すると、目が丸くなり「そういう事ですか!」と

ここ数年モヤモヤしていた事が晴れたようです。

しかし、それで喜んでいられません。

キャッシュフローが年々減ってます。このまま行くとどうなりますか? と質問をすると

「銀行に返済が出来なくなり、リスケを申し入れ、お金が借りられなくなり、最悪倒産ですかね」

と苦笑いで答えられました。

「はい、資金ショート状態ですので、リスケをして状況が良くなればいいですけど、

 この先、前期のように収支トントン、または赤字の場合、支払先や従業員に影響がでますね」

私の応答に、中野さんは身が引き締まったようです。

経営改善センターに「早期経営改善計画」策定と補助金申請を行う

中野社長は、私のブログを読んでいたので、国の補助金を使った

「早期経営改善計画」を望んでいました。

自分の賞与もない状態ですし、事業の全体像の視える化と改善計画には

最適ですから、私も受け入れました。

実は「早期経営改善計画」には、実行を後押しする仕掛けがあります。

一つには、私の様な「経営革新等支援機関」と言う外部の人間が伴走する事もそうですが、

取引金融機関に、この取組を宣言する事が補助金申請に必要となります。

これは言い意味でプレッシャーになります。

金融機関も必ず評価・応援してくれるので、とても良い事だと思います。

申請書を作り、中野社長と各都道府県に設置してある「経営改善センター」に

出向いて、担当の職員に概要の説明をして受理され、最後に職員から

「必ず改善できると思いますよ。丸山さんと一緒に頑張って下さいね」言われ

中野社長は「はい、必ずやり遂げます」と答えました。

経営全体を俯瞰して見るとどこにメスを入れるかが明快になる

「早期経営改善計画」を策定するには最低限下記が必要です。

① ビジネスモデル俯瞰図

② 資金実績・計画表

③ 損益計画

④ アクションプラン

書式は、経営改善センターがHPにアップしている内容に準ずれば
自由に選べます。

実は我々キャッシュフローコーチⓇは、①以外は、通常のクライアントに
価値提供しているツールがあるのです。

特に②と③は1枚の表「1シートマネープラン(キャッシュフロー計画表)」で
会社のお金流れが1枚物で把握出来ます。

中野さんと順番に現状の把握から始めました。

私が質問をして、中野さんが受け身で答える方式で確認をすると

ビジネスモデルは、意外に単純な構造だと言う事と

全体を俯瞰して見ると、中野さん自ら問題に気づき始めました。

【仕入れ面での問題】

・樹脂成型用の材料の在庫が多い。
(確かに狭い工場に米袋のように積み上げられている)

・その在庫金額を常に把握していない。
(税理士に言われて、年1回棚卸をするのみ。実はそれも正確性に欠ける)

・1年間使用していない在庫がある。

【その原因】

・材料発注量に数値的な根拠がない。

【その対策】

・毎月在庫量を確認し、引き当て表を作成する。

・使用無し材料をリストアップし、それが使われる部品を洗い出し
 顧客に今後使用があるのか見通しを聞く。

最初の入り口で、中野さんはここまで気づき対策の方向性も
自ら導き出しました。

最後に私から積み上げられている在庫を指さし

「これは何に見えますか?」と質問をすると

中野さんは、しばらく考え、はっとした感じで「お金ですね」と答えました。

そうなんです。 過剰在庫は資金が張付く1要因です。

また未使用在庫が、本当に未使用になると廃棄となり利益を圧迫します。

これで資金ショートの1要因を潰しこめそうです。

【生産・加工面での問題】

・急な生産の依頼、短納期対応が多く残業・休出が多々ある。

・元請から金型を支給されるが、使用していないものもある。
(これも在庫同様に積んであり、工場の裏にある倉庫にも保管されている)

【その原因】

・長い付き合いの中で、言えばやると思っている。(?)

(当社もその対応が出来るから、注文が来ると思い込んでいる)

・返却するものもあるが、返却=転注のイメージがあり
 積極的になれない。

【その対策】

・社長が発注担当及び責任者と面談し「当社へ発注する理由は何か}を再確認する。

・その中で、顧客理由による残業・休出の現状を数値で話す。

・一定のリードタイムを切った注文には、単価に割り増し設定をお願いする。

・金型は注文が終了した時点で、都度今後の使用を確認する。
 保管要請がある場合には、保管料金を頂く。

・これら顧客に関する事は全て契約書に記載する。
(新規は最初から、現状の取引先は契約書を見直し、取引先に相談を持ち掛ける)

ここでも私から中野さんに積み上げられた金型を指さし、

「これは何に見えますか?」と質問をすると

少しニヤッとして「お金ですね」と答えました。

そうなんです。 小売業ではスペース当りの売上を管理しています。

もし、この金型の保管スペースが無かったら、もう1台成型機を設置して
事業が出来ます。

ですから、未使用で単に保管しているだけなら、せめて「保管料」を請求しましょう。

『この行為は、下請法で正当な行為として認められています。

 これを拒否された場合、公的機関のヒアリングが入りますので堂々と

 請求しましょう』

【販売面での問題】

・全体的に売上総額が落ちている。
 原因は家電向けの主力のA社。逆に医療向けは微増。

【その原因】

・A社は先代が創業時から取引のある会社で、苦しい時も
 共に歩んできた自負が先方にもある。

 しかし、先代の急逝とA社社長が代表権にのない会長に退いた。
 新社長は当社への想いは薄い。

・売上減少(A社からすれば発注減少)の真原因を掴んでいない。

【その対策】

・A社向けの売上の推移表を作成し、発注責任者との面談で原因を聞き出す。

お金のブロックパズルで今後の損益計画を作る

決算書から経営の意思決定に必要な数字のみ抜き出し

中野さんとホワイトボードに過去3期分の図を作りました。

そこで見えてきたのは、

① 3%程度の毎年の売上減少

② 業界標準の粗利率が確保出来ていない
 (現状粗利率38%レベル。 40%以上に乗せたい)

③ その結果、返済や次への投資に必要なキャッシュフローが稼げていない

でした。

この「3%」や「2%」と聞いて、中野さんにどう思いますか?と

質問をすると「やれる気がする」と答えました。

そうなるようにお金のブロックパズルでシュミレーションをすると
見事、キャッシュフローが返済を上回り、人件費予算も上がりました。
(労働分配率は変化ないので、根拠ある予算です)

中野さんは、「たったこれだけで、劇的に改善するのですね」と
笑顔が戻ってきました。

あとは実行あるのみです。

経営課題をアクションプランに落とし込む

お金のブロックパズルから理想の損益の概要をサクッと作り、
詳細版を策定しました。

後はそれが実現出来るように、アクションプランを作ります。

中野さんとこれまで、私が質問する、中野さんが答える方式で

コミュニケーションして来たので、答えは見えてます。

【販売面でのアクションプラン】

平成30年度は前期に対し、売上3%UP必達。

年々減少気味の家電向けを吸収すべく、微増傾向且つ粗利率が良い医療向け売上を
前期比+2,000千円の6,500千円の受注を必達目標とする。

【粗利率向上面でのアクションプラン】

粗利率は、医療向けメーカーへの訪問を月1回から2回だったのを、
毎週訪問し、ニーズを引き出し、即注文を頂く。

計画1年目は前期比+0.8%の38.8%を必達目標とする。

【人件費予算面でのアクションプラン】

上記を確実に実行する事で、前期役員賞与ゼロを分配出来るようにする。

労働分配率は50%を基本に置き、粗利が増えればその分、
従業員含め人件費予算が増える方針とする。

これで、「早期経営改善計画」はほぼ完了です。

中野さんから「どのようにしていきましょうか?」と質問があったので

「中野さんは、どうありたいですか?」と逆に質問をすると

「毎月、計画に対して実績が積みあがっていく実感が欲しいです」と答えました。

その通りです。 計画は立てただけでは実現は半分以下です。

毎月の評価・改善が必要です。

これをPDCAサイクルを回すと言います。

PLAN(計画)⇒ DO(実行)⇒ CHECK(評価)⇒ ACTION(改善) 

私が月1回訪問し、1シートマネープラン(キャッシュフロー計画表)
に入力した損益計画に対して、試算表の実績値を入力して、
その乖離と原因を見直します。

改善すべき点は、全て書き出し、行動へ繋げます。

その後の武蔵野プラスチックの経過

昨年末に突貫で策定した「早期経営改善計画」。

今年から私が月一訪問し、4ケ月を過ぎました。

私が関与していなかった昨年前半の数値は、
前期より悪化傾向もみられました。

ただ、決算期とは納税のための区切りでしかありません。
事業活動はその後も継続します。

重要なのは、理想の状態に対して、描いた事が
少しづつ積み上がり、実現へ向けて実感する事です。

その意味では、今年に入り、粗利率が良い医療向けの注文が
中野社長が、足しげく顧客を訪問した効果があり、
昨年より上回って来ました。

在庫も少しづつ減っています。

金型の一部返却を開始し、工場にスペースが確保出来ました。

社員さんも以前より、活き活きとしてきたようです。

前期は収支トントン、借金返済不可のキャッシュフローでしたが、
今期はギリギリですが、利益が確保出来、返済も本業のキャッシュフローで
行ける見通しです。

まだまだ予断は許せないですが、このペースで中野社長や社員さんと
歩んでいきたいと思います。

先日中野社長から「丸山さんは、まるで医者のようだ」と言われました。

確かにに健康診断や検査をするように、経営診断をしますからね。

でも、実際に行動しているのは社長や社員さんたちです。

私は、社長が本業に専念でき、社長と社員が夢を語りあう場を作り出す

キャッシュフローコーチⓇとしての役割を果たしているだけです。

如何でしたでしょうか?

武蔵野プラスチック 中野社長と共に取組んだ「早期経営改善計画」

を中野社長の許可を頂いてますので、先着5名の方にPDFで差し上げます。

(冒頭にも書きましたたが、社名と個人名は仮名です。
 また記載されている事も個人が特定できないように丸めてあります)

ご希望の方は、最下段の「コメントを残すから」

早期経営改善計画武蔵野プラスチックとお書きの上、送信ください。

投稿者プロフィール

丸山 一樹
丸山 一樹
特定非営利活動法人 日本経営士協会 首都圏支部役員 経営士 丸山未来経営研究所 代表所長 ■ 主な執筆活動 「近代中小企業」(経営者向け専門誌) 「東洋経済オンラインニュース」 http://toyokeizai.net/articles/-/95664 ■ 経営者向け勉強会 決算書を読み解けず、会社のお金の流れにドンブリな経営者に「お金のブロックパズル」を使って視覚的に誰でも一瞬で理解出来る「脱★ドンブリ経営実践セミナー」を定期開催している。 ■経産省認定 経営革新等支援機関(関財金1第587号)